相続放棄したら不動産の管理責任もなくなるのか?

親や親族から相続する予定の不動産に借金や維持費の負担が大きい場合、相続を放棄することを考える人も多いでしょう。
しかし、相続放棄をすればすぐに不動産の管理責任がなくなるわけではありません

今回は、相続放棄をした場合の不動産の管理責任について詳しく解説します。


1. 相続放棄とは?

相続放棄とは、被相続人(亡くなった人)の財産や負債を一切引き継がない手続きです。
家庭裁判所に申述し、認められることで最初から相続人ではなかったことになるのが特徴です。

財産だけでなく、借金や固定資産税の負担も引き継がない
相続放棄をすれば、不動産の所有権も放棄される
相続開始を知った日から3ヶ月以内に手続きをする必要がある

💡 相続放棄が認められると、その不動産の権利や負債とは無関係になると思いがちですが、実は管理責任が残るケースがあります!


2. 相続放棄しても不動産の管理責任は一時的に残る

相続放棄をしても、次の相続人や国が引き継ぐまでの間は、最低限の管理責任が残ることに注意が必要です。

(1)民法940条「相続財産の管理責任」

民法940条では、相続放棄をした人にも以下の管理責任が課されると定められています。

📌 「次の管理者が決まるまで、必要な範囲で相続財産を管理する義務がある」

相続放棄しても、次の相続人や管理者が決まるまでは不動産を放置できない
管理義務を怠ると、近隣住民への損害賠償責任が生じる可能性がある

(2)具体的な管理責任とは?

相続放棄後の管理責任は、積極的な維持管理ではなく「最低限の管理」が求められます

🔹 放置すれば危険を及ぼす可能性のある建物の管理
(例)倒壊の恐れがある場合、応急処置をする必要がある

🔹 周辺住民や第三者に迷惑をかけない管理
(例)庭の草木が隣地に侵入しないよう手入れする

🔹 不法占拠を防ぐための管理
(例)放置すると空き家が不法占拠される可能性があるため、鍵をかけておく

⚠ 相続放棄をしても、管理責任を怠ると法的責任が生じる可能性があります。


3. 管理責任を完全になくす方法は?

相続放棄後に不動産の管理責任を完全に解消するためには、次の方法があります。

(1)次の相続人に管理責任を引き継ぐ

相続放棄をした場合、次の順位の相続人(兄弟姉妹、甥・姪など)が相続人となります。
もし次の相続人がその不動産を管理できるなら、その人に管理責任が移ります。

📌 ただし、次の相続人も相続放棄する可能性がある点に注意!


(2)相続財産管理人を選任する

相続放棄をした結果、すべての相続人が相続を放棄すると、不動産の管理者がいなくなるため、家庭裁判所が「相続財産管理人」を選任します。

相続財産管理人が不動産の管理・処分を行う
最終的に売却や国庫帰属(国が引き取る)される可能性がある
相続放棄した人は管理義務から解放される

💡 裁判所に「相続財産管理人の選任申立」を行えば、管理責任から解放される可能性が高いです!


(3)「相続土地国庫帰属制度」を利用する

2023年に導入された「相続土地国庫帰属制度」を利用すれば、最終的に国に土地を引き取ってもらうことも可能です。

相続したくない不要な土地を国に引き取ってもらえる
建物付きの土地や管理負担が大きい土地も対象(条件あり)
一定の負担金が必要(10年分の管理費相当)

国が引き取るには条件が厳しく、以下のような土地は対象外になることがあります。
❌ 倒壊の危険がある建物付きの土地
❌ 汚染された土地
❌ 権利関係が複雑な土地

📌 「相続財産管理人」を利用するか、「国庫帰属制度」を活用することで、相続放棄後の管理責任を完全に解消できる可能性があります!


4. まとめ|相続放棄しても管理責任が残るので要注意!

相続放棄をすると不動産の所有権はなくなりますが、次の管理者が決まるまでは最低限の管理責任が発生します

相続放棄をしても、次の相続人や国が引き継ぐまでの間は管理責任がある
不動産の管理を怠ると、損害賠償責任を問われる可能性がある
「相続財産管理人の選任申立」や「相続土地国庫帰属制度」を活用すれば、管理責任を完全に解消できる

💡 「いらない不動産だから相続放棄すれば終わり!」と考えていると、後から思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。

相続放棄を検討している方は、事前に専門家に相談し、適切な対策を講じることが重要です。

墨田区をはじめ、東京・神奈川・千葉・埼玉で不動産売却をお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。