空き家900万戸時代の現状と対策 2025年度版

はじめに:日本の空き家900万戸時代と2025年の課題
日本の空き家問題は、年々深刻さを増しています。総務省が2024年4月に公表した「令和5年住宅・土地統計調査」の確報値によると、全国の空き家総数は過去最多の900万戸に達し、総住宅数に占める空き家率も13.8%と過去最高を記録しました。この「900万戸時代」は、私たちの社会に多岐にわたる影響を及ぼしており、2025年を迎えた今、その対策は待ったなしの状況です。

( 出典:総務省統計局 令和5年住宅・土地統計調査)
空き家は、単に利用されていない建物というだけでなく、放置されることで景観の悪化、治安への不安、老朽化による倒壊リスク、さらには周辺の不動産価値の低下など、多くの問題を引き起こします。また、所有者にとっても、固定資産税の負担、管理の手間、活用方法の模索といった悩ましい課題がのしかかります。
2025年現在、少子高齢化や人口減少、都市部への人口集中といった社会構造の変化は依然として続いており、空き家の発生抑制と適切な管理・活用の両面からの対策が、これまで以上に重要となっています。特に、2023年12月に施行された改正「空家等対策の推進に関する特別措置法」により、「管理不全空家」に対する措置が強化され、所有者の責任はより一層重くなっています。
この記事では、2025年現在の最新情報に基づき、日本の空き家問題の現状と背景、空き家を放置するリスク、そして具体的な対策としての活用方法、関連する法律、税金、利用できる補助金制度まで、網羅的かつ分かりやすく徹底解説します。空き家を所有している方、将来相続する可能性のある方、そして地域社会の一員としてこの問題に関心をお持ちのすべての方々にとって、この記事が具体的な一歩を踏み出すための一助となれば幸いです。

1. なぜ空き家は増え続けるのか?最新の発生原因と背景
空き家が増加し続ける背景には、複合的な要因があります。2025年現在の主な原因と背景を整理してみましょう。
- 相続による取得の増加: 親などが亡くなり実家を相続したものの、相続人が既に別の場所に住居を構えていたり、遠方に住んでいて管理が難しかったりするケースが最も多い原因の一つです。総務省の調査でも、空き家の取得経緯の半数以上が「相続」となっています。兄弟姉妹で共有名義となり、活用や処分について意見がまとまらないことも空き家化を招きます。
- 少子高齢化と人口減少: 日本の総人口は減少傾向にあり、特に地方ではその傾向が顕著です。高齢化により所有者が施設に入所したり亡くなったりする一方で、家を継ぐ若い世代が少ない、あるいは都市部へ流出しているため、空き家が増加しています。
- 都市部への人口集中と地方の過疎化: 仕事や生活の利便性を求めて都市部に人口が集中する一方、地方では人口流出と高齢化が進み、地域全体の活力が低下。それに伴い、住宅需要も減少し、空き家が目立つようになっています。
- 新築住宅の供給と住宅ストックの飽和: 日本では依然として新築住宅が多く供給されており、住宅ストック全体としては充足している状態です。中古住宅市場の活性化が十分に進んでいないことも、既存住宅が空き家化する一因と考えられます。
- 管理の困難さとコスト負担: 空き家の所有者にとって、定期的な清掃、草刈り、修繕といった管理には手間と費用がかかります。特に遠方に住む所有者にとっては大きな負担です。また、固定資産税や都市計画税も継続的に発生します。
- 解体費用の問題: 老朽化した空き家を解体するにも高額な費用がかかるため、費用を捻出できずに放置されるケースも少なくありません。「解体費用をかけたくない」「更地にしても使い道がない」といった理由で空き家のままになっていることも多いです。
- 実家への愛着など心理的な要因: 長年住み慣れた実家や、親との思い出が詰まった家に対して愛着があり、売却や解体に踏み切れないという心理的な要因も、空き家化の背景として見過ごせません。
これらの要因が複雑に絡み合い、全国的に空き家問題の深刻化を招いているのです。

2. 空き家放置の末路:2025年最新リスクと所有者の責任
空き家を放置することは、所有者自身はもちろん、周辺住民や地域社会全体にとっても多くのリスクをもたらします。2025年現在、特に注意すべきリスクと、強化された所有者の責任について解説します。
2.1. 所有者が直面する経済的リスク
- 固定資産税・都市計画税の負担増(「特定空家」「管理不全空家」への措置): 適切な管理がされていない空き家は、2023年12月施行の改正「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づき、自治体から「管理不全空家」として指導・勧告を受ける可能性があります。勧告を受けると、土地の固定資産税の住宅用地特例(最大1/6に減額)が解除され、固定資産税が最大6倍になることがあります。さらに状態が悪化し、「特定空家」に認定されると、同様の措置に加え、改善命令や行政代執行による解体が行われるリスクもあります。 (画像:固定資産税の増額イメージ図 - 特例ありとなしの税額比較など)
- 資産価値の著しい低下: 管理されず放置された空き家は、雨漏り、シロアリ被害、構造材の腐食などにより急速に老朽化し、不動産としての価値が大幅に下落します。いざ売却しようとしても買い手がつかない「負動産」となる可能性が高まります。
- 管理・修繕コストの増大: 放置期間が長引くほど建物の劣化は進み、必要な修繕費用は雪だるま式に増えていきます。また、近隣からの苦情に対応するための費用や、定期的な見回り・清掃を業者に委託する場合の費用も発生します。
- 行政代執行による解体費用請求: 「特定空家」に指定され、自治体からの改善命令にも応じなかった場合、最終的には行政代執行により強制的に空き家が解体されることがあります。その解体費用(数百万円に上ることも珍しくありません)は、全額所有者に請求されます。
- 損害賠償責任の発生: 空き家の瓦や外壁が落下して通行人に怪我をさせたり、隣家を損傷させたりした場合、所有者は民法上の工作物責任に基づき損害賠償責任を負う可能性があります。自然災害時(台風や地震など)に倒壊して被害を拡大させた場合も同様です。
2.2. 周辺環境・地域社会への悪影響
- 景観の悪化と地域の魅力低下: 雑草が生い茂り、建物が朽ち果てた空き家は、地域の景観を著しく損ない、街全体の印象を悪化させます。これは地域の魅力低下に繋がり、新たな住民の流入を妨げる要因にもなります。
- 衛生環境の悪化と健康被害: ゴミの不法投棄場所となったり、ネズミやハクビシン、スズメバチなどの害虫・害獣の巣窟となったりすることがあります。これにより、悪臭の発生や感染症のリスクなど、周辺住民の衛生環境が悪化し、健康被害を引き起こす可能性も否定できません。
- 防犯上の問題と治安悪化: 人の気配がない空き家は、不審者の侵入や不法占拠、放火、ゴミの不法投棄、さらには薬物取引や特殊詐欺の拠点など、犯罪の温床となる危険性があります。これにより、地域の治安が悪化し、住民の不安が増大します。
- 防災上のリスク増大: 老朽化した木造の空き家などは、地震や台風、大雪などの自然災害時に倒壊しやすく、避難路を塞いだり、火災発生時には延焼の原因となったりする可能性があります。特に密集した住宅地では、一つの空き家の倒壊が周辺家屋に連鎖的な被害を及ぼす危険性も指摘されています。
- 地域コミュニティの衰退: 空き家の増加は、その地域の人口減少や高齢化を象徴し、地域住民の交流機会の減少や連帯感の希薄化を招くことがあります。これにより、自治会活動の停滞や生活関連サービス(店舗、公共交通など)の縮小・撤退が進み、地域コミュニティ全体の活力が失われていく可能性があります。
このように、空き家の放置は多方面に深刻な影響を及ぼします。所有者は、これらのリスクを十分に認識し、早期の対策を講じることが求められています。
3. どうする?空き家:多様な活用方法と2025年のトレンド
空き家を所有している場合、放置せずに有効活用するための様々な選択肢があります。それぞれの方法にはメリット・デメリット、費用、注意点があり、空き家の状態や立地条件、所有者の意向によって最適な方法は異なります。2025年現在の主な活用方法と、近年のトレンドについて見ていきましょう。
3.1. 売却する
空き家を手放し、管理の負担やリスクから解放されたい場合に最も一般的な選択肢です。
- 現状のまま売却(仲介)
- メリット: リフォームなどの初期費用がかからない。手間が少ない。
- デメリット: 老朽化が進んでいると売却価格が低くなりがち。買い手が見つかりにくい場合がある。契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)のリスク。
- 費用・注意点: 不動産会社への仲介手数料(売買価格の3%+6万円+消費税が上限)、印紙税、登記費用など。売却前にホームインスペクション(住宅診断)を行うことで、買主とのトラブルを未然に防ぐことも有効です。
- 不動産会社による買取:
- メリット: 短期間で現金化できる。仲介手数料が不要な場合が多い。契約不適合責任が免責されることが多い。
- デメリット: 仲介による売却よりも価格が低くなる傾向(市場価格の6~8割程度が目安)。
- 費用・注意点: 査定額の妥当性を複数の会社で比較検討することが重要です。
- リフォーム・リノベーションして売却:
- メリット: 付加価値を高めて売却価格の上昇が期待できる。買い手がつきやすくなる。
- デメリット: リフォーム費用がかかる。費用対効果を慎重に見極める必要がある。工事期間が必要。
- 費用・注意点: リフォーム箇所や規模によって費用は大きく変動。デザイン性や現代のニーズに合ったリフォームが求められます。
- 解体して更地で売却:
- メリット: 建物の管理負担がなくなる。買い手が土地の用途を自由に決められるため、需要層が広がる場合がある。
- デメリット: 解体費用(木造で1坪あたり3~5万円程度が目安)がかかる。解体後は住宅用地特例が適用されなくなり、土地の固定資産税が大幅に上がる可能性がある。
- 費用・注意点: 解体費用、測量費用など。売却までの期間が長引くと税負担が重くなるため注意が必要です。

3.2. 賃貸する
安定した家賃収入を得たい場合に有効な選択肢です。
- そのまま賃貸(普通賃貸借契約):
- メリット: 定期的な家賃収入が期待できる。将来的に自己使用や売却も可能。
- デメリット: 入居者募集の手間や費用。家賃滞納リスク。修繕費や管理費の負担。入居者トラブルのリスク。
- 費用・注意点: 不動産管理会社への管理委託料(家賃の5%程度が目安)、リフォーム費用(必要に応じて)、固定資産税、火災保険料など。立地や状態によっては借り手が見つかりにくいことも。
- リフォーム・リノベーションして賃貸:
- メリット: 賃料アップや入居率向上が期待できる。より幅広い層にアピールできる。
- デメリット: リフォーム費用がかかる。費用回収までの期間が長くなる。
- 費用・注意点: ターゲット層に合わせたリフォーム計画が重要。補助金制度を活用できる場合もあります。
- サブリース契約:
- メリット: 不動産会社が一括で借り上げるため、空室リスクや管理の手間を軽減できる。安定した賃料収入が見込める(保証賃料)。
- デメリット: 通常の賃貸よりも手取り収入が少なくなる(保証賃料は市場家賃の80~90%程度)。契約内容によっては保証賃料の見直しや契約解除のリスクも。
- 費用・注意点: 契約内容を十分に確認し、信頼できる業者を選ぶことが重要です。
- DIY型賃貸:
- メリット: 入居者が自由に改修できるため、老朽化した物件でも借り手が見つかりやすい。貸主の修繕負担を軽減できる。
- デメリット: 改修範囲や原状回復について明確な取り決めが必要。専門的な知識が必要な場合も。
- 費用・注意点: 契約書に改修可能な範囲や費用負担、退去時の原状回復義務などを明記する必要があります。

3.3. 自己利用する(リフォーム・リノベーション)
自身や家族が住むために、あるいはセカンドハウスや趣味の空間として活用する方法です。
- メリット: 思い入れのある家を活かせる。ライフスタイルに合わせた自由な空間づくりが可能。
- デメリット: 多額のリフォーム・リノベーション費用がかかる場合がある。維持管理費も継続的に発生。
- 費用・注意点: 耐震改修や断熱改修など、性能向上リフォームには補助金が出る場合があります。将来的な住み替えや相続も考慮した計画が大切です。

3.4. 解体して更地として活用・管理する
建物の老朽化が著しく、活用が難しい場合の選択肢です。
- 更地にして駐車場や駐輪場として活用:
- メリット: 初期投資が比較的少なく、管理も容易。
- デメリット: 収益性が低い場合がある。固定資産税が高くなる。
- 費用・注意点: アスファルト舗装、区画線引き、精算機設置などの費用。立地条件が重要。
- 更地にして太陽光発電設備を設置:
- メリット: 長期的に安定した売電収入が期待できる(FIT制度・FIP制度の適用状況による)。環境貢献。
- デメリット: 初期投資が高額。天候による発電量の変動。制度変更のリスク。
- 費用・注意点: パネル設置費用、パワーコンディショナー、接続費用など。専門業者との契約内容をよく確認する必要があります。
- 更地にして売却・貸地:
- 「3.1. 売却する」の解体後売却や、土地を貸し出して地代収入を得る方法。

3.5. 地域貢献・社会貢献に活用する
近年注目されている活用方法で、空き家を地域資源として活かす取り組みです。
- 空き家バンクへの登録:
- 自治体やNPOが運営する空き家情報サイトに物件を登録し、移住希望者や活用希望者とマッチングを図る制度。
- メリット: 公的な仕組みなので安心感がある。移住促進や地域活性化に貢献できる。
- デメリット: 必ずしも成約に結びつくとは限らない。物件の条件が合わないと登録できない場合も。
- 費用・注意点: 登録料は無料の場合が多いですが、成約時には不動産業者への仲介手数料が発生することがあります。
- NPO法人や地域団体への提供・連携:
- コミュニティスペース、子育て支援施設、高齢者サロン、移住体験施設、シェアハウス、サテライトオフィスなど、地域のニーズに合わせた多様な活用が可能です。
- メリット: 社会貢献ができる。管理を委託できる場合がある。固定資産税の減免措置を受けられる場合も。
- デメリット: 収益性は低いか、無償提供となることが多い。活用団体との密な連携が必要。
- 費用・注意点: 活用目的や運営方法について、団体と十分に協議し、契約内容を明確にする必要があります。
- クラウドファンディング等を活用した再生プロジェクト:
- 改修費用などを広く一般から集め、地域住民や支援者と共に空き家を再生・活用する取り組み。
- メリット: 資金調達の可能性が広がる。多くの人を巻き込み、共感を得ながら進められる。
- デメリット: プロジェクトの企画・運営に専門的なノウハウが必要。資金が集まらないリスクも。
- 費用・注意点: プロジェクトの魅力や実現可能性、地域への貢献度などを明確に打ち出すことが重要です。

3.6. 民泊として活用する
観光客向けの宿泊施設として活用する方法です。
- メリット: 高い収益性が期待できる場合がある。国際交流の機会も。
- デメリット: 旅館業法または住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく許可・届出が必要。初期投資(消防設備、内装改修など)や運営コストがかかる。近隣住民への配慮やトラブル対応が不可欠。
- 費用・注意点: 年間営業日数制限(民泊新法では180日以内)。運営代行業者を利用する場合は手数料が発生。自治体によっては独自の条例で規制が厳しい場合もあるため、事前確認が必須です。

2025年の空き家活用のトレンド
- DX(デジタルトランスフォーメーション)の活用: オンライン内見、電子契約、AIによる物件査定、スマートロックやIoTを活用した無人運営(民泊や賃貸など)が進んでいます。
- サステナビリティと地域循環: 古民家再生や地域の建材利用、エネルギー効率の高いリフォームなど、環境負荷を低減し、地域の資源を活かす取り組みが評価されています。
- 多拠点居住・ワーケーション需要の高まり: 都市部と地方の二拠点生活や、働きながら休暇を楽しむワーケーションの普及に伴い、短期・中期滞在型の賃貸物件やコワーキングスペース併設型のシェアハウスなどの需要が増加しています。
- 官民連携・NPOの役割拡大: 自治体だけでなく、NPO法人や民間企業が連携し、専門知識やネットワークを活かして空き家の利活用や所有者支援を行うケースが増えています。
これらのトレンドを踏まえ、自身の空き家の特性や地域のニーズに合った活用方法を検討することが重要です。
4. 知っておきたい!空き家対策の法律と制度(2025年最新版)

空き家問題に対応するため、国や自治体は様々な法律や制度を整備しています。2025年現在、特に所有者が理解しておくべき重要な法律と制度について解説します。
4.1. 空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)
空き家対策の根幹となる法律で、2015年に施行され、2023年12月13日に改正法が施行されました。この法律の主なポイントは以下の通りです。
- 空き家の定義: 「居住その他の使用がなされていないことが常態である建築物及びその敷地」と定義されています。
- 所有者の責務: 空き家の所有者や管理者に対し、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空き家の適切な管理に努める責務を課しています。 特定空家等への措置
- そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態 上記に該当する空き家を「特定空家等」と定義し、市町村はこれに対し、助言・指導、勧告、命令、行政代執行(強制解体など)といった措置を段階的に講じることができます。
- 勧告: 「特定空家等」に対して勧告がなされると、固定資産税の住宅用地特例の適用対象から除外され、土地の固定資産税が最大6倍になる可能性があります。
- 命令: 勧告に従わない場合、市町村長は必要な措置を命じることができます。命令に違反すると50万円以下の過料が科されることがあります。
- 行政代執行: 命令に従わない場合、市町村が所有者に代わって必要な措置(解体など)を行い、その費用を所有者に請求することができます。
- 管理不全空家等への措置(改正法で新設): 「特定空家等」になるおそれのある空き家を「管理不全空家等」と位置づけ、市町村が指導・勧告を行うことができるようになりました。この勧告を受けた場合も、固定資産税の住宅用地特例の適用対象から除外される可能性があります。これにより、より早期の段階で所有者に適切な管理を促すことが目的とされています。
- 空家等管理活用支援法人の指定: 空き家に関する専門知識を持つNPO法人や民間事業者などを、市町村が「空家等管理活用支援法人」として指定し、空き家の管理や活用に関する相談対応、情報提供、所有者と活用希望者のマッチング支援などの役割を担わせることができるようになりました。
- 財産管理人による空家等の管理・処分の円滑化: 所有者不明の空き家等について、家庭裁判所が選任する財産管理人による管理・処分を円滑化するための規定が整備されました。
この法律により、空き家所有者の責任は明確化・強化されており、適切な管理が強く求められています。
4.2. 関連する主な法律
- 建築基準法: 建物の安全性や敷地との関係などを定めており、老朽化した空き家が接道義務違反や耐震基準不適合となっている場合、この法律に基づく指導や是正命令を受けることがあります。
- 都市計画法: 都市計画区域内での土地利用や建築に関する規制を定めており、空き家の活用(用途変更など)の際にはこの法律の規制を確認する必要があります。
- 民法: 相続(遺産分割、相続放棄、相続登記)、所有権、契約不適合責任(売買時)、不法行為(空き家が原因で他者に損害を与えた場合)など、空き家に関する多くの権利義務関係に関わってきます。
- 不動産登記法: 不動産の権利関係を公示するための法律で、相続した空き家は速やかに相続登記を行う必要があります。登記を怠ると、売却や活用が困難になるだけでなく、過料の対象となる可能性もあります(2024年4月1日から相続登記の申請が義務化)。
4.3. 相続土地国庫帰属制度
2023年4月27日から施行された制度で、相続または遺贈により取得した土地で、一定の要件を満たす場合に、その土地の所有権を国に帰属させることができる制度です。管理不全な空き家が建っている土地や、活用が困難な土地を手放すための一つの選択肢となり得ますが、建物がある場合は解体して更地にする必要があったり、10年分の土地管理費相当額の負担金が必要だったりと、利用には条件があります。2025年現在、この制度の利用状況や課題についても注目が集まっています。
5. 賢く活用!空き家の税金と節税対策(2025年度版)

空き家を所有・管理・活用・売却する際には、様々な税金が関わってきます。2025年現在の主な税金と、利用できる可能性のある節税対策について解説します。
5.1. 所有・管理にかかる税金
- 固定資産税・都市計画税: 毎年1月1日時点の不動産所有者に対して課税されます。
- 住宅用地特例: 居住用の建物が建っている土地については、固定資産税が最大1/6、都市計画税が最大1/3に軽減される特例があります。
- 「特定空家」「管理不全空家」への勧告による特例解除: 前述の通り、これらの勧告を受けると住宅用地特例が解除され、税額が大幅に増加する可能性があります。これは空き家所有者にとって最も注意すべき税務リスクの一つです。
- 負担調整措置: 急激な税負担増を緩和するための措置がありますが、それでも特例解除の影響は大きいです。
5.2. 売却時にかかる税金
- 譲渡所得税・住民税: 空き家を売却して利益(譲渡所得)が出た場合に課税されます。譲渡所得は「売却価格 -(取得費 + 譲渡費用)」で計算されます。
- 取得費: 不動産の購入代金や建築費、購入時の仲介手数料など。不明な場合は売却価格の5%を概算取得費とすることができますが、実際の取得費が証明できる方が有利な場合が多いです。
- 譲渡費用: 売却時の仲介手数料、印紙税、測量費、解体費(売却のため解体した場合)など。
- 税率: 所有期間によって異なり、5年超(長期譲渡所得)の場合は所得税15.315%・住民税5%、5年以下(短期譲渡所得)の場合は所得税30.63%・住民税9%となります(復興特別所得税含む)。
- 印紙税: 不動産売買契約書に貼付する印紙代です。契約金額によって税額が異なります。
- 登録免許税: 所有権移転登記の際に、買主が負担するのが一般的ですが、売主側で抵当権抹消登記などが必要な場合はその費用がかかります。
5.3. 賃貸時にかかる税金
- 所得税・住民税: 家賃収入から必要経費(固定資産税、減価償却費、修繕費、管理委託料、火災保険料、ローン金利など)を差し引いた不動産所得に対して課税されます。
- 事業税(一定規模以上の場合): 不動産貸付業として一定規模(例:貸家5棟以上、貸室10室以上など)を超える場合に課税されることがあります。
5.4. 相続・贈与時にかかる税金
- 相続税: 空き家を相続した場合、その評価額(一般的に固定資産税評価額や路線価を基に評価)が相続財産総額に含まれ、相続税の課税対象となります。
- 贈与税: 空き家を生前に贈与された場合、その評価額に対して贈与税が課税されます。
5.5. 主な節税対策・特例制度(2025年度版)
- 被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例(相続空き家の3000万円控除): 相続または遺贈により取得した被相続人の居住用家屋(昭和56年5月31日以前に建築されたもの等、一定の要件あり)またはその敷地を、2027年(令和9年)12月31日までに売却し、一定の要件を満たす場合に、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる制度です。売却前に耐震リフォームや解体が必要な場合もあります。適用要件が複雑なため、税務署や税理士への確認が不可欠です。
- マイホームを売ったときの3,000万円の特別控除(居住用財産の譲渡所得の特別控除): 自身が住んでいた家を売却する場合に、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる制度。離婚による財産分与で自宅を売却する場合などにも適用できる可能性があります。
- 特定のマイホームを買い換えたときの特例: マイホームを売却し、新たにマイホームを購入する場合に、一定の要件を満たせば譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができる制度。
- マイホームの買換えの場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除: マイホームを売却して損失が出た場合に、一定の要件を満たせば、その損失を他の所得と損益通算したり、翌年以降3年間にわたり繰越控除したりできる制度。
- リフォーム促進税制: 耐震改修、バリアフリー改修、省エネ改修、同居対応改修、長期優良住宅化リフォームなど、特定の住宅リフォームを行った場合に、所得税額の特別控除や固定資産税の減額措置を受けられる場合があります。空き家をリフォームして活用する際に検討できます。
- 固定資産税・都市計画税の減免措置: 自治体によっては、特定の条件を満たす空き家の活用(例:地域貢献的な活用、NPOへの貸付など)に対して、固定資産税や都市計画税の減免制度を設けている場合があります。
税金に関する制度は非常に複雑で、毎年のように改正が行われます。空き家の状況や活用方法によって適用できる特例も異なるため、必ず最新情報を確認し、税理士や税務署、自治体の税務課などの専門家に相談することを強くお勧めします。
6. 見逃せない!国・自治体の空き家対策補助金・助成金(2025年最新版)

空き家の適切な管理、解体、改修、そして有効活用を促進するため、国や多くの自治体が様々な補助金・助成金制度を設けています。これらの制度を賢く利用することで、空き家対策にかかる費用負担を軽減できる可能性があります。2025年現在、注目すべき主な制度を紹介します。
6.1. 国の主な支援事業
国土交通省が中心となり、空き家対策に関する様々な支援事業を実施しています。これらの事業は、多くの場合、地方自治体を通じて間接的に所有者や活用者へ支援が届く形となります。
- 空き家対策総合支援事業: 地方公共団体が行う、空き家等の実態調査、所有者特定、相談体制の整備、空家等管理活用支援法人の活動支援、特定空家等に対する措置(解体・改修等)、空き家の活用促進(マッチング支援、改修支援等)といった幅広い取り組みを総合的に支援する事業です。この事業を通じて、間接的に空き家所有者も補助を受けられることがあります。
- 住宅市場を活用した空き家対策モデル事業: 民間事業者やNPO法人などが提案する、空き家の発生抑制、流通・活用促進、適切な管理の確保、空き家に関する多様な相談対応など、先導的な空き家対策の取り組みを支援する事業です。過去には、DIY型賃貸の推進、地域資源と連携した活用、専門家連携による相談体制構築などが採択されています。こうしたモデル事業から生まれたノウハウが、全国の空き家対策に活かされています。
- その他関連事業: 長期優良住宅化リフォーム推進事業、地域型住宅グリーン化事業なども、空き家の性能向上リフォームを行う際に利用できる場合があります。
国の事業の最新情報や詳細は、国土交通省のウェブサイトで確認できます。多くは地方自治体が窓口となるため、お住まいの自治体の情報を併せて確認することが重要です。
6.2. 地方自治体の補助金・助成金制度
各都道府県や市区町村は、地域の実情に合わせて独自の空き家対策補助金・助成金制度を設けています。以下は一般的な制度の例ですが、必ずお住まいの自治体、または空き家のある自治体のウェブサイトや担当窓口で最新の情報を確認してください。 制度の有無、名称、対象条件、補助額、申請期間、必要書類などは自治体によって大きく異なります。
- 空き家解体費補助金: 老朽化して危険な空き家や、活用が見込めない空き家を解体する際の費用の一部を補助する制度です。
- 対象: 特定空家等に認定されたもの、一定期間以上使用されていないもの、耐震性がないものなど、条件は自治体により異なります。
- 補助額: 解体費用の1/5~1/2程度で、上限額(例:50万円~100万円程度)が設定されていることが多いです。
- 注意点: 事前申請が必要で、解体業者との契約前に申請しなければならない場合がほとんどです。解体後の土地の固定資産税が上がる可能性も考慮に入れる必要があります。
- 空き家改修費(リフォーム・リノベーション)補助金: 空き家を自己居住用、賃貸用、地域交流施設などに改修する際の費用の一部を補助する制度です。
- 対象: 耐震改修、バリアフリー改修、省エネ改修、内装・外装改修、水回り改修など。移住者向け、子育て世帯向け、特定の活用目的(店舗、工房など)に限定される場合もあります。
- 補助額: 改修費用の1/3~2/3程度で、上限額(例:100万円~300万円程度)が設定されていることが多いです。
- 注意点: こちらも事前申請が原則です。対象となる工事内容や業者の選定に条件がある場合があります。
- 家財道具等撤去費補助金: 空き家の中に残された家財道具やゴミの片付け・処分費用の一部を補助する制度です。解体やリフォームの前段階として利用されることが多いです。
- 補助額: 費用の1/2程度で、上限額(例:10万円~30万円程度)が設定されていることが多いです。
- 空き家活用支援補助金(運営費補助など): 空き家を地域活性化に資する施設(コミュニティスペース、移住体験施設、店舗など)として活用する場合の初期費用や、一定期間の運営費の一部を補助する制度です。
- 空き家バンク登録奨励金・成約奨励金: 空き家バンクへの物件登録や、空き家バンクを通じた売買・賃貸契約の成立に対して奨励金を支給する自治体もあります。
- 移住・定住促進に伴う空き家取得・改修補助: Uターン・Iターン・Jターンなどでその地域に移住し、空き家を購入・改修して定住する人に対して補助金を出す制度です。

6.3. 補助金・助成金制度利用の際の注意点
- 予算の上限と公募期間: 多くの補助金制度には予算の上限があり、申請期間も限られています。年度の早い段階で予算が終了することもあるため、早めの情報収集と準備が重要です。
- 事前申請の原則: ほとんどの補助金は、工事契約や事業開始前に申請し、交付決定を受ける必要があります。事後申請は認められないことが多いので注意が必要です。
- 対象要件の確認: 空き家の状態、所有者の所得、改修内容、活用目的など、詳細な対象要件が定められています。自身が対象となるか、事前にしっかりと確認しましょう。
- 必要書類の準備: 申請には、登記簿謄本、固定資産評価証明書、工事見積書、図面、住民票、納税証明書など、多くの書類が必要となります。余裕をもって準備しましょう。
- 他の制度との併用: 国の制度と自治体の制度、あるいは複数の自治体制度を併用できる場合とできない場合があります。確認が必要です。
- 専門家への相談: 制度が複雑で分かりにくい場合は、自治体の担当窓口のほか、建築士や不動産業者、行政書士などの専門家に相談することも有効です。
補助金制度は、空き家対策の大きな味方となります。積極的に情報を収集し、活用を検討しましょう。
7. 空き家問題解決へのロードマップ:所有者が取るべき具体的ステップ
空き家を所有している、あるいは相続したけれど、何から手をつければよいか分からないという方も多いでしょう。ここでは、空き家問題解決に向けた具体的なステップと、各段階でのポイントを解説します。
ステップ1:現状把握 ~空き家と自分自身の状況を正確に知る~
まず最初に行うべきは、空き家そのものの状況と、それを取り巻く法的な権利関係、そして自身の意向や経済状況を正確に把握することです。
- 空き家の物理的な状況確認:
- 現地調査: 実際に空き家を訪れ、建物の内外の劣化状況(屋根、外壁、基礎、雨漏り、シロアリ被害、傾きなど)、庭木の手入れ状況、残置物の有無などを確認します。写真や動画で記録しておくと良いでしょう。
- インフラ状況: 電気、ガス、水道が利用可能か、配管などに問題がないか確認します。
- 周辺環境: 立地条件(駅からの距離、生活利便施設、学校区など)、近隣の空き家状況、地域の雰囲気、ハザードマップ(浸水、土砂災害リスクなど)を確認します。
- 専門家による建物診断(ホームインスペクション): 必要に応じて建築士などの専門家に依頼し、建物の構造的な安全性や劣化状況を詳細に診断してもらいます。修繕が必要な場合の費用概算も把握できます。
- 法的な権利関係の確認:
- 登記事項証明書(登記簿謄本)の取得: 法務局で取得し、不動産の所有者(名義人)、所在地、面積、地目、構造、共有名義人の有無、抵当権などの担保設定の有無を確認します。相続登記が未了の場合は、速やかに行う必要があります。
- 固定資産評価証明書・公課証明書の取得: 市区町村役場で取得し、固定資産税評価額や年間の税負担額を確認します。
- 自身の意向と状況の整理:
- その空き家をどうしたいのか(活用したい、手放したい、当面は維持したいなど)、自身の基本的な意向を整理します。
- 空き家対策にかけられる費用や時間、専門知識の有無など、自身の経済的・時間的制約を把握します。
- 相続した空き家の場合、他の相続人との関係性や意向も確認が必要です。
ステップ2:方向性の検討と情報収集 ~放置リスクと可能性を探る~
現状把握ができたら、次に具体的な方向性を検討します。
- 空き家放置のリスク再認識: 「3. 空き家を放置することによる多様なリスク」で解説した内容を再確認し、放置し続けることのデメリットを具体的に理解します。
- 活用方法の選択肢検討: 「4. 不動産としての空き家の多様な活用方法とその比較」で紹介した売却、賃貸、リフォーム、解体、地域貢献など、様々な選択肢の中から、自身の空き家の状態や立地、自身の意向に合ったものをいくつかピックアップします。
- 関連法制度・支援制度の情報収集: 「5. 知っておきたい!空き家対策の法律と制度」「6. 見逃せない!国・自治体の空き家対策補助金・助成金」で解説した情報を参考に、利用できる可能性のある法律上の制度や補助金・助成金について調べます。
- 家族・親族間での話し合い: 相続した空き家や共有名義の空き家の場合、関係者間での十分な話し合いが不可欠です。それぞれの意向や事情を共有し、将来的なトラブルを避けるためにも、合意形成を目指します。話し合いが難航する場合は、弁護士などの専門家を交えることも検討しましょう。
ステップ3:専門家への相談 ~具体的なアドバイスを得る~
ある程度の方向性が見えてきたら、専門家に相談して具体的なアドバイスを求めます。どの専門家に相談すべきかは、検討している活用方法や抱えている問題によって異なります(詳細は「8. 困ったときの相談先」を参照)。
- 相談前の準備:
- ステップ1で収集した資料(登記事項証明書、固定資産評価証明書、空き家の写真、現地調査のメモなど)を整理しておきましょう。
- 自身の意向や相談したい内容、質問事項を事前にまとめておくと、スムーズに相談が進みます。
- 複数の専門家から意見を聞く: 一つの専門家の意見だけでなく、必要に応じて複数の専門家からセカンドオピニオンを聞くことも有効です。特に費用が大きくかかる活用方法(大規模リフォーム、解体など)や、法的な判断が難しい場合は慎重に進めましょう。
ステップ4:活用・処分計画の策定 ~具体的な計画に落とし込む~
専門家のアドバイスも参考に、最終的な活用方法または処分方法を決定し、具体的な計画を立てます。
- 目標設定: いつまでに何を達成したいのか、具体的な目標を設定します(例:〇年以内に売却完了、月〇万円の家賃収入を目指すなど)。
- 詳細な収支計画:
- 初期費用: 売却時の仲介手数料、リフォーム費用、解体費用、登記費用、税金など。
- ランニングコスト: 固定資産税、管理費、修繕積立金、保険料、賃貸管理委託料など。
- 予想収益: 売却価格、家賃収入、補助金収入など。
- これらの要素を盛り込み、資金計画(自己資金、ローンの利用、補助金の活用など)を具体的に立てます。回収期間やリスク要因も考慮に入れましょう。
- スケジュール作成: 各工程(情報収集、専門家選定、契約、工事、手続きなど)に必要な期間を見積もり、全体のスケジュールを作成します。
- リスク管理: 想定されるリスク(買い手が見つからない、工事の遅延、費用の超過、災害など)を洗い出し、対応策を検討しておきます。
ステップ5:実行と管理 ~計画に基づき行動し、適切に管理する~
計画が固まったら、いよいよ実行に移します。
- 契約手続き: 売買契約、賃貸借契約、工事請負契約など、必要な契約を締結します。契約内容は十分に確認し、不明な点は専門家に相談しましょう。
- 各種手続き: 登記変更、許認可申請、補助金申請など、必要な行政手続きを行います。
- 工事の実施(必要な場合): リフォームや解体工事を行う場合は、信頼できる業者を選び、工事の進捗を適切に管理します。
- 売却・賃貸活動: 不動産業者と連携し、積極的に買い手や借り手を探します。
- 実行後の管理・フォローアップ:
- 賃貸に出した場合は、入居者管理や建物管理を適切に行います。管理会社に委託することも検討しましょう。
- 当面活用しない場合でも、定期的な見回り、清掃、換気、庭の手入れなど、適切な管理を継続することが重要です。空き家管理代行サービスを利用するのも一つの方法です。
- 計画通りに進んでいるか定期的に見直し、必要に応じて計画を修正します。
空き家問題の解決には時間と労力がかかることが多いですが、一つ一つのステップを着実に進めていくことが重要です。
8. 困ったときの相談先:空き家問題の専門家と連携のポイント

空き家問題は複雑で、法務、税務、建築、不動産取引など多岐にわたる専門知識が必要となる場合があります。一人で抱え込まず、状況に応じて適切な専門家に相談することが、スムーズな解決への近道です。
8.1. 主な相談先とその役割
- 自治体の空き家相談窓口:
- 役割: 空き家に関する総合的な相談対応、情報提供(地域の空き家バンク、補助金制度、専門家紹介など)。
- メリット: 無料で相談できることが多い。地域の実情に詳しい。
- 限界: 直接的な問題解決(契約代行、法的紛争解決など)は行えない。専門家への橋渡しが主な役割。
- 相談タイミング: まず何から始めればよいか分からない場合、地域の情報を知りたい場合。
- 不動産業者:
- 役割: 空き家の査定、売買仲介、賃貸仲介、買取、活用コンサルティング。
- 費用目安: 仲介手数料(売買:売買価格の3%+6万円+消費税が上限、賃貸:家賃の1ヶ月分+消費税が上限など)、査定は無料の場合が多い。
- 選び方: 空き家取引の実績、地域密着度、担当者の専門性・提案力、複数の業者を比較検討する。
- 相談タイミング: 売却や賃貸を具体的に検討し始めた段階。
- 司法書士:
- 役割: 相続登記(不動産の名義変更)、遺言書作成支援、成年後見制度利用支援、財産管理。
- 費用目安: 相続登記で数万円~数十万円(不動産の評価額や件数による)、相談料は初回無料や時間制の場合がある。
- 選び方: 相続案件や不動産登記に詳しい司法書士を選ぶ。
- 相談タイミング: 相続が発生したとき、相続登記が未了の場合、権利関係が複雑な場合。
- 弁護士:
- 役割: 相続人間の紛争解決(遺産分割協議・調停・審判)、近隣トラブル対応、契約トラブル、行政との交渉、財産管理人選任申立てなど、法的な紛争解決全般。
- 費用目安: 相談料(30分5,000円~1万円程度が多い)、着手金・成功報酬(経済的利益に応じる)。法テラスの無料相談や費用立替制度を利用できる場合も。
- 選び方: 不動産問題や相続問題に強い弁護士を選ぶ。
- 相談タイミング: 相続で揉めている場合、近隣とトラブルになっている場合、法的な手続きで困っている場合。
- 土地家屋調査士:
- 役割: 不動産の表示に関する登記(建物の新築・増築・滅失登記など)、土地の測量、境界確定。
- 費用目安: 業務内容による(例:土地境界確定測量で数十万円~)。
- 選び方: 実績と専門性、地域での評判を確認。
- 相談タイミング: 土地の境界が不明確な場合、建物を解体・新築した場合。
- 建築士・リフォーム業者:
- 役割: 建物の劣化診断(ホームインスペクション)、耐震診断、リフォーム・リノベーションの設計・見積もり・施工。
- 費用目安: インスペクションで5~10万円程度、リフォーム費用は規模や内容による。
- 選び方: 空き家改修の実績、提案力、見積もりの透明性、複数の業者を比較。
- 相談タイミング: 建物の状態を詳しく知りたい場合、リフォームやリノベーションを検討している場合。
- 税理士:
- 役割: 固定資産税、都市計画税、相続税、贈与税、譲渡所得税など、空き家に関する税務相談、確定申告代行。
- 費用目安: 相談料、顧問料、申告代行料など内容による。
- 選び方: 不動産税務や相続税に詳しい税理士を選ぶ。
- 相談タイミング: 空き家を相続したとき、売却・賃貸を検討しているとき、税金に関して不明な点があるとき。
- NPO法人・地域団体:
- 役割: 空き家の活用相談、所有者と利用希望者のマッチング支援、地域資源としての空き家再生プロジェクトの企画・運営、管理代行など。
- 費用目安: 相談は無料の場合が多い。サービス内容により実費や手数料が発生することも。
- 選び方: 活動実績、地域との連携度、専門性、透明性。
- 相談タイミング: 地域貢献的な活用を考えている場合、一人での活用が難しいと感じる場合。
- 空き家管理代行サービス業者:
- 役割: 定期的な巡回(通風、雨漏り確認、庭木確認など)、清掃、郵便物管理、緊急時対応など、所有者に代わって空き家を管理する。
- 費用目安: 月額数千円~数万円程度(サービス内容や物件の広さによる)。
- 選び方: サービス内容、料金体系、実績、対応エリア、契約内容を比較検討。
- 相談タイミング: 遠方に住んでいて自分で管理できない場合、管理の手間を軽減したい場合。
8.2. 専門家相談のポイント
- 早めの相談を心がける: 問題が複雑化する前に相談することで、解決策の選択肢が広がり、費用や労力を抑えられる可能性があります。
- 相談目的を明確にする: 何に困っていて、専門家に何を期待するのかを明確にしてから相談しましょう。
- 情報を整理して持参する: 不動産の登記事項証明書、固定資産税納税通知書、空き家の写真、これまでの経緯をまとめたメモなど、関連資料を準備しておくと相談がスムーズに進みます。
- 複数の専門家から話を聞く: 特に費用が高額になる場合や、重要な判断が必要な場合は、複数の専門家から意見を聞き、比較検討することが大切です。
- 見積もりと契約内容をしっかり確認する: 費用体系や業務範囲、契約期間などを事前に確認し、納得した上で依頼しましょう。
- 専門家同士の連携: 場合によっては、複数の分野の専門家が連携して対応する必要があります。中心となって調整してくれる専門家を見つけるか、自身が情報を共有し、連携を促す意識を持つことが重要です。例えば、相続が発生した空き家を売却する場合、司法書士(相続登記)、税理士(相続税・譲渡所得税)、不動産業者(売却仲介)の連携が必要になります。
まとめ:900万戸時代の空き家問題と向き合い、未来へつなぐために

日本の空き家は900万戸を超え、その問題はもはや他人事ではありません。しかし、空き家は単なる「問題」ではなく、適切な対策を講じることで新たな価値を生み出す「資源」ともなり得ます。
この記事では、2025年現在の空き家問題の現状から、放置するリスク、多様な活用方法、そしてそれらを支える法律・税金・補助金制度、さらには具体的な解決ステップや専門家への相談に至るまで、幅広く解説してきました。
空き家を所有している方にとって最も重要なことは、問題を先送りせず、早期に現状を正確に把握し、主体的に対策を検討し始めることです。そして、一人で悩まず、家族や親族とよく話し合い、必要に応じて自治体の相談窓口や専門家の力を借りることです。
空き家対策は、個人の資産を守るだけでなく、地域の安全・安心を守り、活性化にも繋がる社会的な意義を持つ取り組みです。この記事が、皆様の空き家問題解決への第一歩を踏み出すための一助となり、空き家が「負動産」ではなく、未来へつながる「活きた不動産」となることを心より願っています。
墨田区をはじめ、東京・神奈川・千葉・埼玉で不動産売却をお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。