相続不動産を売却した場合の譲渡所得税と節税対策

相続した不動産を売却した際には、譲渡所得税が発生する可能性があります。思わぬ税負担に驚かないためにも、譲渡所得税の仕組みや節税対策を理解しておくことが大切です。

この記事では、譲渡所得税の計算方法や活用できる節税対策について詳しく解説します。


1. 相続した不動産を売却した際の譲渡所得税とは?

譲渡所得税とは、不動産を売却して得た利益(譲渡所得)に課される税金です。

✅ 譲渡所得の計算方法

譲渡所得は以下の計算式で求められます。

譲渡所得 = 譲渡価格(売却価格) - 取得費 - 譲渡費用

  • 取得費:不動産の購入代金や購入時の諸費用(登記費用、仲介手数料など)
  • 譲渡費用:売却にかかった費用(仲介手数料、測量費、解体費用など)

なお、相続した不動産の場合、取得費は被相続人が購入したときの金額が基準となります。取得費が不明な場合は、売却価格の**5%**を取得費として計上できます(概算取得費)。


✅ 譲渡所得税の税率

不動産の所有期間に応じて、以下の2種類の税率が適用されます。

所有期間税率(所得税+住民税)
5年以下(短期譲渡所得)39.63%
5年超(長期譲渡所得)20.315%

➡️ 所有期間が5年を超えると税率が約半分になるため、売却時期を調整するのも節税のポイントです。


2. 相続不動産の売却で活用できる節税対策

✅ ① 取得費加算の特例

相続税を支払った不動産を相続後3年10か月以内に売却した場合、支払った相続税の一部を取得費に加算できる特例です。

➡️ 取得費が増えると譲渡所得が減り、結果的に譲渡所得税が軽減されます。

【例】
  • 相続した不動産の売却価格:3,000万円
  • 取得費(相続税加算後):2,500万円
  • 譲渡費用:100万円

譲渡所得 = 3,000万円 - 2,500万円 - 100万円 = 400万円

➡️ 特例を活用しなかった場合に比べ、課税対象が大幅に減少します。


✅ ② 3,000万円の特別控除

相続した不動産が被相続人の居住用不動産だった場合、一定の条件を満たせば、譲渡所得から3,000万円まで控除できる特例です。

主な条件

  • 被相続人が1人暮らしをしていた家屋であること
  • 相続後、事業や貸付、居住の用に供されていないこと
  • 売却までに空き家のままであること
  • 昭和56年5月31日以前に建築された物件(旧耐震基準)

➡️ 築年数が古い物件や空き家の売却で有効な特例です。


✅ ③ マイホーム売却特例(自宅として利用していた場合)

相続後に自らが住んでいた不動産として売却した場合、3,000万円の特別控除10年超所有軽減税率の特例が適用される可能性があります。


✅ ④ 売却時期の調整

売却のタイミングを見極めることで、以下の効果が得られます。

  • 5年超の所有期間により税率が低下
  • 年内の収入調整で、他の所得との合算を抑えられる

3. 節税対策の注意点

✅ 相続税の申告期限(相続開始から10か月以内)を意識し、取得費加算の特例を適用する場合は期限を守りましょう。
✅ 特別控除や特例の要件は複雑なため、税理士や不動産の専門家に相談するのが安心です。
✅ 節税対策を目的に過度な価格調整をすると、売却のタイミングを逃してしまうリスクもあるので注意が必要です。


4. まとめ|相続不動産売却は節税対策を活用しよう

相続不動産を売却する際には、取得費加算の特例3,000万円の特別控除など、さまざまな節税対策があります。

事前に譲渡所得税の仕組みを理解し、適切な対策を行うことで、税負担を抑えつつスムーズな売却が可能になります。

相続不動産の売却でお悩みの際は、不動産会社や税理士と連携し、最適な方法を選ぶことが重要です。